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狭軌とは
狭軌とはNarrow Gaugeのことではありません
狭軌という言葉は 「狭軌にするか、広軌にするか」
という日本の幹線鉄道の選択議論において、3フィート6インチ軌間のことを狭軌、
4フィート8インチ半軌間=国際標準軌のことを
広軌と呼んだことに始まります。
日本に鉄道が引かれた時代は、その先生にあたるイギリスでは狭軌
(1435mmゲージ)と広軌
(2140mmゲージ=グレートウェスタン鉄道の7フィートゲージ)の
どちらが優れた鉄道システムであるかという論争が狭軌優位で結着した時代でした。
距離あたりの建設費が安上がりな3フィート半ゲージが植民地を中心に流行していた
ことから日本でもこの3フィート6インチ軌間で鉄道がスタートします。
明治20年代から新政府の運営が軌道に乗ったこともあって、列強に伍するには
幹線鉄道を広軌 (この場合は4フィート8インチ半=1435mm=国際標準軌)
に改軌するべしという議論が起こり、以来国を挙げて狭軌のまま路線を伸ばして行く
か、まず改軌して広軌にするかという論争が数十年に亘って続きました。
大正時代以降 (実に戦後製の車両まで及ぶ)
の日本の国鉄車両は広軌に改軌しやすいように作られていた事実は、いかに改軌論争
が激しかったかを今に伝えています。 結局日本の国鉄は狭軌で
英本土並みの車両限界、米本土と同じ自動連結器高さを組み合わせる道、
強度狭軌を目指す選択しました。
現在の日本の鉄道旅客輸送は「人キロ」のシェアで全世界の58%という
突出した鉄道王国となり、その輸送の大半を狭軌鉄道で実現させています。
欧米の鉄道先進国は全てStandard Gauge=国際標準軌でメインラインを形成し、
乗り入れ不能というデメリットがあっても狭い軌間が必要なローカルラインに
Narrow Gauge を採用しています。 これらの国から見れば日本の
メインラインはまさしく Narrow Gaugeです。
しかし、日本のサブロクをNarrow Gaugeと表現したら
お笑いになってしまいます。
日本のナローには京王線の4フィート半1372mmから610mmまで幅があり、
メインラインを含む大半はナローという「いっしょくた」日本の鉄道の
実態を理解していれば
論ずる以前の段階としか表現のしようがありません。
なかでも日本のサブロクはメインラインとしての機能を持つべく長い時間を掛けて成長
してきているので、事実である Narrow Gauge が本来持つ性格とはあまりにも違う種
類の鉄道になってしまいました。
また、1067mmは日本の標準軌であるという主張もあります。
日本政府は私鉄を1067mm軌間に誘導し、後日国有化しようという企みをもっていたの
で日本の実態はその通りなのですが、標準軌=1435mmという認識も広がりつつある現
在、いらぬ混乱を招く言葉の使用法ではないでしょうか。
狭軌という言葉は間違いなくNarrow Gauge を訳したものだと想像されます。
そして広軌という言葉はその対語です。
それに対してNarrow Gauge の対語はStandard Gauge だと思います。 故に訳語
であるはずの狭軌は自分で呼吸し始めた途端にNarrow Gauge とは違う意味の言葉に
なってしまっていると思います。 「狭軌」は特定の軌間、
3フィート半=3フィート6インチ=サブロク=1067mmをはっきり
指差して生まれた言葉なのです。
日本の鉄道にとってサブロク=1067mmはあまりにも重要な軌間です。 狭軌という
言葉に押し込められた情念を込めて 「サブロク=狭軌」 「狭軌=サブロク」
なのです。
成田空港駅ですぐ隣の Standard Gauge の電車と比べて
(1)車体断面の大きさ
(2)車体長さ
(3)編成の長さ
(4)最高速
Narrow Gauge がメインライン、Standard Gauge がローカルという驚異の国に来た感激はあったはずですが期待外れも甚だしい事態だ ったことでしょう。 彼の台詞は彼がナローゲージャーであることを物語っているか らです。
サブロクが Narrow Gauge に分類される事実と、実見した日本のサブロクが Narrow Gauge の持つ要素に欠けている事実のギャップは、 それを知っている者の目から見ると笑いのタネになる程大きいことを示しています。
彼はサブロクを自分の興味リストから外したことでしょう。
2006/8/10