HO

1/80はHOではありません

鉄道模型Models IMON

「NとHO」

日本の鉄道模型で盛んなのは 「N」と「HO」の2種類だと思っていませんか?
「だいたい当たっています」が、同時に「殆ど間違っています」

知識としては「正解」ですが名称が間違っています
「Nゲージと16番」と言えば「正解」です

「N」「HO」は欧米の鉄道模型規格名です

「N」は「Nゲージ」の略称として殆ど問題ないのですが、 「HO」は16番と全く概念が異なる規格で、 決して混同してはいけないものです

鉄道模型雑誌は「規格名」は間違えません

しかし日本の鉄道模型界には規格を管理する「機関」が無いので、メーカーは 嘘(ウソ)の規格名を名乗っても責められることはありません
ですから格好が良くて販売に有利な「HO」を名乗っています
嘘を言っても利益を優先する・・・
常に消費者サイドに立って鉄道模型店のあり方を考えるIMONとしては 看過することはできない鉄道模型業界の暗部、恥部です

HOとは「3.5ミリスケール」(約1/87)を意味する鉄道模型の縮尺規格で 1920年代のイギリスが起源です
アメリカとヨーロッパも1930年代から同じ「HO」を採用、世界中で圧倒的 (Nの100倍程)に普及しています
1/87の縮尺に従って線路、車両、シーナリーストラクチャーを作る決まりで 国際標準軌は 16.5mmゲージを使い、それより狭いゲージの鉄道は縮尺通り 狭いゲージの線路を用意します
HOで狭軌の線路は12mm、10.5mm、9mmが 世界的によく使われています

日本型1/80は1942年1月、世界で「HO」が確立されたのを見たTMS 社主 山崎喜陽が提唱し、「16番」と命名しました
HO=1/87(アメリカ・ヨーロッパ)
OO=1/76(イギリスのOOはHOの16.5mmゲージを使用)
と一緒に遊べる「ゲージモデル」として提唱されたものです

「16番」はゲージの規格として提唱されたものです

「16番ゲージ」というものはありますが「HOゲージ」というものはありません
1/80がHOゲージなら
1/76もHOゲージですか? 違います。OO(ダブルオー)です、 縮尺が違うからです
HOと付けば1/87を表し、16.5mmにはHOという意味はありません

1/80はHOではありません
1/80はHOゲージでもありません
1/80は16番です 16番ゲージと呼んでもいいです

それは意見、見解ではなく必ず至る結論です

1/80の提唱者;山崎喜陽はTMS誌上でも1/80はHOではないと 言っています(当然ですが)
それでも1/80をHOと呼んで平気な破廉恥者が絶えないのは 格好が良いからのようです
反面「16番」という名称は格好が悪い、古臭いと言われます

1/80 16.5mmの規格に16番より格好の良い名前を定めたいのならば、 少なくとも既知で世界共通の 「規格」と混同の恐れも無い名前をつけるべきです

そうせずにHOと銘打つ業者は誤解による利益を期待しているだけなのです


欧米では 1/160 のスケールを「N」と命名しています
「N」は、9mmゲージの線路を使うことから「ナイン・ミリメートル」 の頭文字を使って「N」と呼ばれています
世界標準軌1435mmゲージの線路を160で割るとほぼ9mmです。
(9mm×160=1440mm≒1435mm)の方が 計算が易しくて判りやすいかもしれません。

イギリスでは、1/148を採用し、同じ9mmゲージの線路を使っています。  このスケール名称にも「N」という名前を採用しています。

日本ではどうでしょう?
日本では、標準軌を使用している新幹線は欧米と同じ 1/160 に縮尺
狭軌1067mmゲージが多い在来線は、標準軌車両でも 1/150 に縮尺
「N」と同じ9mmゲージを使って「単一ゲージ・複数スケール」を実現、 「Nゲージ」を名乗っています。
地面を作ることが多そうなサイズであるにも関わらず「ゲージモデル」を選択した ことには、賛否両論あるかと思いますが
(1)「N」と言う言葉の語源が「ナイン・ミリメートル」という’ゲージ’の 頭文字から来ていること
(2)「N」の名称を使用するスケールがもともと二種類存在する
と言う点から考えても妥当なネーミングだと思います。


HO

「HO」は 「3.5mmスケール」 を意味する規格名です。
ドイツとアメリカを中心に発展した鉄道模型の世界では珍しいイギリス起源の規格名 です。
Hは「Half」の頭文字です。
Oはイギリス式のOスケール「7ミリスケール」 (1フィートを7ミリに縮尺する)です。
HOは(7÷2=)3.5ミリスケールとなりますので、約1/87です。
ゲージは1435mmの1/87で16.5mmとなります。
ゲージは32mmの半分である16mmにはなっていません。
こうした「HO」のネーミングを見れば、当初から線路巾(ゲージ)と 全く関係が無い由来の規格であることが明確に判ります。  すべてのOスケールは32mmゲージの線路を使ってるからゲージが半分という 発想なら16mmにするのが当然です。
HOはゲージの規格ではなく縮尺の規格です。
当のイギリスでは、3.5ミリスケールよりもキリのよい4ミリスケール (約1/76)の方が盛んになってしまい、HOを駆逐してしまいました。
4ミリスケールは規格名「OO」(ダブルオー)で、普及しているHOの 16.5mmゲージの線路を使います。
同じ16.5mmの線路を使う模型でも縮尺が違えば「OO」と、 規格名も違います。
同じ16.5mmの線路を使っても縮尺が違う1/80は 「HO」ではありません。
16.5mmの線路がHOならOOという規格名も存在しません。
「小さな英国型は4mmスケールで作ります」


1/80

日本でHOというと1/80が出てきてしまいます。

1/80はHO、あるいはHOゲージで宜しいのでしょうか?
1/80という縮尺は・・・何処から来たのでしょうか?

これには明確な答えがあります。

1/80はHOではありません 
1/80を提唱して、日本に定着させたのは山崎喜陽という人です。
山崎喜陽氏は戦前「模型と科学」昭和17年1月号で 日本型1/80鉄道模型を提唱しました。
戦後は昭和21年から、機芸出版社オーナーとして月刊誌『鉄道模型趣味』 (TMS)を発行して日本の鉄道模型趣味と日本型1/80鉄道模型を 育ててきました。

名称は「十六番」です。

英国型は    1/76(4mmスケール;OO)
日本の国鉄型は1/80
米国&欧州型は1/87(3.5mmスケール;HO)
満鉄&鮮鉄型は1/90

線路はHOとOOが既に共通に使っている16.5mmゲージを使用する

これで車両限界や連結器を揃えて、同じ線路で一緒に遊びましょうという提案を されたものです。
現在でも盛んな共通ゲージ・複数スケールによる運転会のスタイルは昭和16年末に 提唱されていたのです。
山崎喜陽氏は世界の鉄道模型の規格に精通していました。当時から有った 「16.5mmゲージ→HO」だから「1/80もHO」という 誤解を正そうと 自身の発刊するTMS誌上で努めています。
しかし最後まで自身が提唱した1/80に対しては名称を与えることなく、単一ゲー ジ16.5mmを使う複数スケールに対して「16番」という名称をつけただけでと うとう亡くなってしまいました。
実はNゲージスケール1/150を日本のメーカーに提案したのも山崎喜陽氏なのです。

「日本で盛んな鉄道模型はNと16番です」
と答えられればほぼ満点
「Nゲージと16番」と答えられれば完全に満点です

さて、何故1/80にはいろいろな呼び名が使われ、「HO」などという嘘が いまだに横行しているのでしょうか?  どうせ嘘なら「OO」と呼んでいれば、同じ「ゲージモデル」だからまだ罪は軽いよ うに思います。 既に1/80=「ジャパニーズ・ダブルオー」という別称が あるとも聞いています。

現在1/80模型に対して使用されているこの3つの規格呼称
HO、HOゲージ、16番
について、更に事情を探ってみましょう


HO

・・・・・・・・・縮尺1/87を表します。

HOゲージ

・・・・・・・・・和製英語です。
縮尺名であるHOにゲージを付けるのはピント外れです。
HOの線路をいろいろな縮尺で使おうという「山崎喜陽先生の提唱」は16番と 名づけられたものです。

16番

・・・・・・・HOの16.5mmゲージのレールを使って、 1/76〜1/90の車両で遊ぶ鉄道模型です。 
もとは1/80だけの名称ではありませんが、いまや1/80の意味を持っています 。 (1/80 9mmを「16番ナロー」などと呼びます)

HO

HOは縮尺1/87の鉄道模型です。

‘ユニスケール・マルチゲージ’ の代表です。

HOは 1920年代、英国で生まれました。

O(オー、またはゼロ番)
「1ft →7mmスケール」(約1/43.5)

       の半分(Half)

「1ft →3.5mmスケール」(約1/87)です。

「0」の32mmゲージ ÷2 ではありません。

(1)「Oゲージのおよそ半分がHOゲージです」
と言う説明に行き当たることがありますが、間違いです。

「Oスケールの半分だからHOスケールです」
と言う説明が正解

(1)の文章の著者が鉄道模型の知識に欠けるために
「あれっ?半分じゃないな・・・少し変だが約半分という表現で逃げよう」
という姿が目に浮かびます。
半分にするなら16mmにします
32mmに対して新しく16.5mmを作ったら、「ハーフ」はつけません
鉄道模型の世界で新しい=より小さい規格名に「ハーフ」が付いているのはHOだけ です
HOは本当に半分だから「Half」をつけたのです

32.5mmゲージの半分を16mmにしておこう
33.5mmゲージの半分を17mmにしておこう
という事ならまだ「少し有り得る」話です

そんな解説をしなくとも、「間違い」は「間違い」です
ばかばかしい「解説」などどうでも良いことです
まず規格をちょっと見れば、成立について調べる以前に鉄道模型の規格を何も知らな い人が先ほどの(1)を書いたことが判ります


疑問; じゃあ、 1/43.5 の Oスケールはなぜ32mmゲージなの?
32mm×43.5=1392mm・・・・1435mm標準軌と合わないぞ
だいいち16.5mmが縮尺どおりなら、倍の33mmであるべきでしょう
 ⇒答え

イギリス式なのでどうにも半端な縮尺のHOですが
ドイツのメルクリン社はじめ多くのメーカーが製品に採用したことから世界的に 広まり、欧米から中国まで広がる世界的な鉄道模型の規格となりました。
Oスケールは、 世界あちこちで縮尺が違いますが
HOスケールは世界中で縮尺が統一された規格であったために大繁栄しました。
もちろん現在でも日本以外は世界中で「圧倒的に盛んなスケール」です。

戦前の日本にも伝わったのですが、情報が皆には正確に伝わっていなかったようです 。 Oゲージの半分だから16mmゲージだと理解した人も居たようです。 
だいいち元祖英国や米国でも「ハーフオー」の解釈には紛糾し、16mmゲージも出 現したようですので当時の日本の模型人たちを責めるのはとんでもない間違いです。 さいわいにも、のちのTMSオーナー山崎喜陽氏は正確な情報を捕らえて、雑誌など を通じて日本国内に再発信しています。

しかしゲージがHOと言う誤解が完全に解消したわけではなく、また後にこの 「スケール名」を騙(かた)って別の規格(16番ゲージ)の商品が販売され、 それが続いたために現在の誤解に繋がっています。

アメリカにおいては模型ユーザーによる団体NMRAによって規定されています。

http://www.nmra.org/beginner/scale.html

ヨーロッパにおいてはユーザーとメーカー合同の団体MOROPが規定しています。

http://www.morop.org/de/normes/nem010_d.pdf

1フィートを3.5mmに縮尺するのが正式な縮尺です。
(HOは「3.5mmスケール」である と表現されます)

1/87(欧MOROPの表記)や
1/87.1(米NMRAの表記)はあくまでも便宜上の縮尺です。
お客様は1フィートを3.5mmにしたスケール「テンプレート」を使いながら レイアウトを作ります。

商品については最初に1/87と謳ってしまった様に、 1/87.08571428で設計するのは不合理なので、 現実的には1/87で設計されています。

世界中の鉄道のメインラインはほとんど標準軌=1435mmを採用しています。
そのため普通にHOと言った場合、線路幅は16.5mmとなります。
しかし、メインラインから分岐するナローゲージの鉄道でも遊びたいとなると、 他の線路幅の線路が必要になります。  その場合、小文字を添付してその規格を表現します。
アメリカでは;
*HOn3 914mm(3ft) →10.5mm ロッキーナローやシェイギヤードロコ
ヨーロッパでは;
*HOm 1000mm →12mm スイスの氷河急行やドイツのハルツ登山鉄道
*HOe 750mm → 9mm ドイツやオーストリアの軽便鉄道
これらの規格には市販品が多く流通しており、 複数の線路幅の模型で遊ぶ人が大勢居ます。
もちろん、標準軌だけ、ナローゲージだけで遊ぶ人も大勢居ます。
いずれにしても 「シーナリー用品」や「建物」、「車」などは縮尺が同じなので共通です。

日本ではどうでしょうか。
日本の国鉄在来線はNarrow Gaugeに分類される1067mmゲージ (もともとは3フィート半 すなわち3フィート6インチゲージ)です。
HOなら線路幅も1/87ですので、 12.26mm付近の線路が必要になります。
更に正確に言えばHOは3.5mmスケールなので、 3.5mm×3.5(実物が3フィート半)=12.25mmです。
しかしインフラを重視する 鉄道模型の本質から言って無闇に 模型線路の幅の種類を増やすのは好ましくないので
TTやHOmに使われている 12mmゲージを採用することになります。

1/87 12mm となります。

この場合、欧米風の命名法なら縮尺名 「HO」 に小文字で 「実物の軌間を表す文字」を添付する必要があります。

ところが「12mm」を発売する模型業者は夫々考えた名前を主張して譲らず、 名称は統一されていません。


16番

16番はHOの16.5mmゲージの線路で遊ぶ鉄道模型です。
‘ユニゲージ・マルチスケール’の鉄道模型のひとつです。
日本の特殊事情(世界の先進国中ゆいいつメインラインが標準軌ではない) をカバーするため考案されました。
雑誌、鉄道模型趣味(TMS)で長年日本の鉄道模型界を引っ張ってきた 山崎喜陽氏が創業前、戦前の雑誌「模型と科学」昭和17年1月号に 提案・発表したのが始まりです。
既存のHO線路を使っているふたつの縮尺

英国を中心に盛んなOO(ダブルオー) =  4mmスケール(1ft →4mm)  =1/76
欧米を中心に盛んなHO(エイチオー) =3.5mmスケール(1ft →3.5mm)=1/87

に加えて日本型の縮尺を、

狭軌の鉄道省型は 1/80
広軌の満鉄、鮮鉄を1/90  (大東亜戦争敗戦により失われて実現しませんでした)

に定め、16番と称して一括、連結器高さや車両限界を近似させることによって、 線路を共有して一緒に遊べるようにしようというものです。

HOもOOも16番であり、 1/80日本型も16番を構成する一要素です。

1/80日本型は戦後大いに発展しました。

ところが 1/80 16.5mmを示す名称は在りません。

1/80をあらわす名称も在りません。

次第に精密になり、 1/80でのスケールモデル(13mm)が現れ、 更にユニスケール・マルチゲージを展開(1/80 9mmナロー) するようになってきてもまだ決定的な名称が無い状況です。


1/80 16.5mmゲージを表す名称の例;

J・・・・・・ 鉄道模型雑誌「とれいん」が提唱しています  1/80 16.5mmゲージモデルを表します

Jスケール・・・・・・ 田渕洋治氏が提唱する1/80縮尺によるユニスケール・マルチゲージ http://www.kk-net.com/~tabuchi/jscale.htm

これらの名称は 現時点では市民権獲得が不十分ですが行手を示していると言えるでしょう。

IMONでは 1/80日本型に対しては既に市民権獲得充分な「16番」を表示しています。

1/80日本型に対してHOという、異なるスケールの名称で販売する業者があり、 いまだに多くのお客様が 誤解、混乱、不愉快のなかに置かれています。

なぜ1/80をHOと呼びたいのでしょう?

個人ならこのように言うでしょう

HO; 名前がまあ格好良い、昔から使っている、一般人にも理解され易い、 相手にも理解される、一体何故いけないんだ?

16番; ダサイ名前、古臭い感じ、16.5mmがなぜ16.5番じゃないんだ? 一般人には理解されない名前、12mmのやつらが押し付けようとしている名前を 何故使わなくてはならない?

(個人がこの様に考え、実行することに対してがっかりはしますが何も言うことは ありません)

さらに、これら「言いたいこと」は業者サイドから見てもすべて同じ事が言えます。
しかし、それに加えて鉄道模型業界には古くから
「16番と表示された模型は売れない  HOと表示された模型は売れる」
という法則が知られています。
この法則は現在でも通用していると思います。

商売上有利だから使うわけです。
心ある事業者ならば早急に改善するべき問題です。

1/80・16番に対して、違う縮尺名「HO」を製品に使用すると必ずお客様の 不便、不利益に繋がります。


答え

答え;英国のOスケールは、元祖ではなく、ドイツ・メルクリン社が既に採用して いた最初のOスケール(ゼロ番) 1/45 32mm 
の線路を借りる前提ではじめた規格だったから、縮尺と線路巾が残念ながら一致しま せん。
イギリス鉄道模型界が採用したがる「1フィートを何ミリにする」という奇妙な縮尺 の「原因」には諸説有りますが、有力な説として、19世紀から英国には「鉄道模型 を作る職人」が居らず、メトリックを採用しているヨーロッパ大陸、ことにドイツに 頼らざるを得なかったからだというものがあります。
実物も、模型もメトリックのドイツ、実物はフィートインチ、模型はミリの英国です 。

一方アメリカは「1フィートを何インチにする」というこれまた奇妙な縮尺を使いた がります。
ドイツに作らせるイギリスと違って、自国で作るアメリカは、割り切れない変な縮尺 は使いません。
しかし、フィートインチの「不便な」12進法を使わざるを得ないので、12の倍数 を縮尺にしないと上手くいかないハンディキャップを背負っています。
プラモデルに見られる1/24,1/48,1/72,1/720などアメリカ起源 です。
ドイツ人と日本人は人類の新しい基準「メトリック」の恩恵から素直な縮尺を選びま す。 例えばプラモでも1/35,1/100,1/700という割り切り方をしま す。
話をアメリカに戻すと、アメリカのOスケールは、1/48で、やはりドイツの ゲージを借りる「ヤドカリ」です。

たとえ「ヤドカリ」でもアメリカの「O」は「Oスケール」です。

しかし、世界中の「O」スケールはドイツ起源の「O」の32mmゲージ線路を使う ので、まるで単一ゲージ複数スケールのようになっており、(作為的になのか)車両 限界も接近しており、ますますまるでゲージモデルのような感じになっています。


誤解、混乱、不愉快

私、井門義博は中学の(1969〜1972)はじめ頃から HO(欧州型)も持っていました。
フライシュマンの電機1台と客車が3両です。
それは親戚か誰かからの頂き物だったとおもいます。
ですから、 小さなHOと大きな16番が違うものであることは既に知っていましたし、 1/80は16番と呼ぶのが正しい事を知っていたのですが、 当時からメーカーは1/80を平気でHOと呼んでいたので、 私もいつも1/80をHOと呼んでしまっていました。

そんなある日、二子多摩川のいさみやで、雑談の途中、店主から注意を受けました

「井門君、日本型をHOと言うのは恥ずかしいよ。16番と呼びなさい。」

そのとき一瞬感じたのは
「知ってるよ、そんなこと!」
という反発でした。
その時から現在まで、このとき注意してもらったこと、 いさみやのおやじさんには深く深く、本当に感謝しています。
しかし「知っていた」私ですら「反発」を感じたのですから、 もしわざと間違えた使い方をするメーカーの言い分を信じたお客様が 「違いますよ」など言われたら半端な反発ではないと思います。

しかし、反発されるからと言っても、1/80がHOだった時代はありません。  1/80はこの世に現れた70年前から現在までHOではないことは 変わらない事実です。

このようにして、売上に有利と言う理由で使われた誤用によって 多くの誤解、混乱、不愉快が発生するとすれば鉄道模型界にとって 大問題であると言わざるを得ません。


不便、不利益

表記が守られていれば単にHOと添えるだけで縮尺を間違えることはありません。  現在の日本では、1/80の商品にも平気でHOと表記されています。
この現状ではHOと言う表記が在っても縮尺を確認する必要があります。  特にパーツの場合が厄介です。(不便)
また、購入したパーツが自分の思っていた縮尺と違う事態も大いに考えられます。  特に既に接着してしまっていた場合には目も当てられないでしょう。(不利益)
模型がアバウトを許していた昔はそれほど大きな損害は無かったかもしれません。  しかし細密化して、設計もかなり高度になってきている現在の模型では、 縮尺違いは致命的な事故となるでしょう。

鉄道模型をめぐる環境は日に日に変化しています。

16番はHOの16.5mmの線路を使用できる 「日本型在来線車両を1/80で作ろう」という 概念です。

しかし、それでは狭軌車両はかなりガニマタになって、 実車の雰囲気とは違ってしまいます。

さらに、実は広軌車両も、逆にガニマタ振りが足りず、実車の雰囲気が出ません。

日本の標準軌道(広軌)の在来線車両(私鉄電車)は、概して車体が小さく、 世界的に見ても独特の雰囲気を持っています。
複線の線路など、まるで4本のレールが等間隔であるように見えてしまいます。

小柄な車体の電車が、「これでもか!」と言うほど広いゲージの線路を疾走してくる 雰囲気をやりたいとなれば16番では無理です。

小柄な車体の電車が、「これでもか!」と言うほど広いゲージの線路を疾走して
疾走してくる雰囲気

この世界にもスケールモデル「HO」が登場することになります。

細密化がどんどん進んでいる鉄道模型界を見れば、 時代が進むとそのようになる事は確実です。
ましてや、狭軌車両を1/87で楽しむモデラーが現在約1000名 (12mm購入経験のあるお客様の数)いらっしゃいます。
そのお客様がHOで広軌車両も欲しいのはごく普通のことです。

近い将来、ホンモノの HOモデルが出揃うことになります。

また、同じ16.5mmの線路に載る台車で

TH-2100AM
KD63
日車D−16
ブリル27MCB
ボールドウィン78−25A

といった製品が1/80と1/87両方で発売される。
さらに、 それら電車の床下器具がパーツとして発売される状況に必ずなります。

1/87が発売されていなかった時代は 16番メーカーによるHO名称詐称に対して鷹揚に構えていられる時代でした。
その時代は既に遠のきつつあります


ユニスケール・マルチゲージ

HOの発想は、縮尺に基準を置いています。
線路幅の違う鉄道もやりたいときは、ひとつの縮尺(ユニスケール)を守り、 線路は夫々別々のもの(マルチゲージ)を使うというものです。

ホームレイアウトを頂点とする個人の 「模型鉄道」を中心に据えた発想だと思います。

実物の鉄道は、いろいろな線路幅の鉄道があります。
日本でも以下の三つのゲージに人気が高い鉄道がたくさんあります。

* 762mm(2ft6in) →9mm 木曾森林、頸城、井笠、草軽、尾小屋、 根室拓殖軌道
*1067mm(3ft6in) →12mm 国鉄、東急、小田急、西武、東武、相鉄、名鉄 、南海
*1435mm(4ft8.5in) →16.5mm 新幹線、京急、京成、銀座線、箱根登山、 近鉄、阪急

HOの世界では実物どおり(台車を交換しなければ)京浜東北線は京浜急行には 乗り入れできません。

それに対して16番は、ひとつの線路(ユニゲージ)を守り、 縮尺は別々(マルチスケール)でも一緒に遊べるようにしようという思想で、 クラブの共有レイアウトや、貸しレイアウト建設を考えた思想ですので、 考え方が百八十度違う存在です。
両者に優劣は存在しません。

16番の世界では、新幹線と在来線は同じ線路を共有し、 同じような大きさになります。
ビックボーイやゼロイチがブルートレインを牽引するのも自由自在です

好みはいろいろです。
それではつまらないと考える人が大勢居るのです。
鉄道に興味が無い人でさえ、新幹線と在来線が同じ線路幅であった瞬間に凍りつく人 はかなり多いのです。
線路幅が同じ・・・・・・それは人によっては「最悪!」と思う酷いことです。

日本に遅れながらもスケール中心の思想(HO)が入ってきたのは当然の成り行き なのです。


ユニゲージ・マルチスケール

線路は遊びとしての鉄道模型にとっても「インフラ」です。
インフラの共用は 鉄道模型の本質 のひとつだと言ってもよいほどの重要なものです。
これを重視した遊び方がユニゲージ・マルチスケールです。

線路もふすまの溝を利用するわけではないので、枕木がちゃんと付いています。
枕木の感じで上に載せて遊べる車両の縮尺も許せる範囲があろうというものです。
また、もっと大切なのは車両限界や、連結器の高さです。
16番の場合、 最初からユニゲージ・マルチスケールとして提唱されてきた規格ですから ユニゲージ・マルチスケールの王様であるといっても良いかもしれません。

結果として ユニゲージ・マルチスケールのようになっているものには Oゲージや N ゲージがあります。

そして、 世界レベルでは16番に引けをとらない ユニゲージ・マルチスケールの鉄道模型にGゲージ(45mm)があります。


鉄道模型の本質

鉄道模型は走らせて遊べる模型です。
そのために通電や絶縁を考えた材質が使われ、 平面性の悪い線路でも脱線しないような構造をとっています。
実物に近い動きを実現できる唯一の模型が鉄道模型です。
しかし走らせる線路が無かったら折角の高価な構造は何の意味もありません。
線路はものすごく大事なインフラです。
ユニスケール・マルチゲージを実現できるようになったのは、 Z〜N〜TT〜HO〜S〜O〜1というちょうどそれぞれ半分の縮尺に並んで、 ちょうど中間点あたりにずれた様々な縮尺・ゲージが現れたお蔭です。
アメリカがマルチゲージを実現するために 独自の「n3」や「n2」の線路を作ってしまったのは凄いことです。
マルチゲージであってもヨーロッパではこのインフラを手に入れるために、 多少の縮尺からのずれを容認して居ます。
例えば HOmの場合1000mm÷87=11.49425287・・・mm
正式な3.5mmスケールを使うと 1000mm÷304.8mm=3.280839895・・・
3.280839895×3.5mm=11.48293963・・・mm
となります。
明らかに11.5mmゲージを使うのが正しいと言えそうです。
しかし、12mm(TTゲージ)を利用し、 そのTTの規格に合せてHOmの規格が作られました。
少しスケールと軌間の整合性は落ちましたが、 賢い選択だったことはその後のHOmの隆盛が証明しています。
この選択がなされたことこそ鉄道模型は走らせる事が、 そのためのインフラが重要である。
成功する規格となるためには縮尺に忠実なだけではなく バランスをとった配慮が重要であるという 「鉄道模型の本質」が顕れていると感じています。


京急デハ230

昨年IMONで発売した京急230形です。

車種も同じ、メーカーも同じ、価格も同じ、発売日も同じです。

呼称が「HO」と「HOゲージ」だとすれば紛らわしいです。
この二つの製品は 「正調」 と 「妥協」 でしょうか?
「ホンモノ」 と 「ニセモノ」 でしょうか?

違います!

ユニスケール・マルチゲージ(HO)と、 ユニゲージ・マルチスケール(16番)です。

どちらもお客様に胸を張って誇れるIMONの鉄道模型製品であり、 遊び方が違うものなのです。


HO 日車D−16

HO 日車D−16


概念

16番における1/80は縮尺ではなく概念です。
なぜなら、HOの線路、16.5mmゲージを使用するため、 その部分は狭軌の場合は1/64.66に、 広軌の場合は1/87になってしまいます。
各人、各社各様に中間領域を割り振ってそれらしく作る必要があります。

1/80が縮尺と言える模型は「13mmゲージ」ですが、 「12mm」以上にハードルが高いです。
なぜなら、1/80縮尺の台車は発売されておらず、 1/80概念(16番)の台車しかないからです。


12.26mm

スケールモデルなら12mmではなく12.26mmじゃなくてはいけないという 意見があるようです。

鉄道模型について少し掘り下げて調べれば納得されるものと思います。

鉄道模型は実物に比べ一桁以上精度が悪いです。
そこで、基準のゲージ+零コンマ何ミリかの余裕を持たせています。
12mmの場合HOJCの規格検討資料が最も多くのデータが参照できます。

http://www.hojc.jp/Std/index.html

通常12.0mm〜12.3mmの範囲に収めるべきとされています。
IMONではHOJC暫定規格を参考にしていますのでこの範囲となります。

鉄道模型は材質の経年変化の影響を受けます 
(実物はレールの交換、ゲージの測定が頻繁に為されますのでその影響は考える 必要がありません)
このゲージの基準は、C、S、F、Hの内容や、 上の図でも判るように分岐器におけるゲージ規格です。
IMONの分岐器は、経年による縮みを考えて12.3mmの最大値ぎりぎりで 製作しています。

そして鉄道模型はカーヴが急ですので、実物に比べて スラックが大きくなってしまいます。
HOJC暫定規格に(12.6mm)と在るように カーヴに使用する前提のフレキシブル線路については 余り蛇行が大にくならないように気をつけながらもかなり大きな スラックを容認しています。
現実にはシノハラの12mmゲージ線路は平均して 12.4mmゲージとなっています。

IMONシステムトラックの直線、曲線はG=12.4mmで製作されていましたが 、三回目のロット以降直線のみG=12.2mmとしています。

この様に、12mmに関しては実際には12.26mmの理想に対して 誤差は百分の一以下程度なのが実情です。

実は本家のHOにおける16.5mm〜16.9mmという誤差の容認によるゲージ の狂いの方がずっと大きいのです。
また、メーターゲージのHOスケールであるHOmは、誤差の容認が逆方向に行って しまうので不利です。
しかし、恐るべき高い能力を持つはずの「人間の目」は、 其処を見分ける能力が無いのです。

12mmの線路、13mmの線路 どちらもご覧になったことがありますか?

見れば驚くことは必定です。
見分けが付かないのです。
突然どちらかのフレキが眼前に現れた場合、両方見慣れた私でも判りません。
車両を載せて、載るか載らないかで初めてどちらか判ります。

ところが HOn3 の10.5mmは直ぐにそれと判ります。

10.5mm〜12mmの差は 12.5%
  12mm〜13mmの差は  7.7%です。

人間の感覚は不思議であると思います。


スラック

鉄道線路は、実物/模型ともにカーブでは少し線路幅が広げられています。  この広げられた部分がスラックです。

スラックがないと曲線抵抗が大きくなります。
固定軸距の大きな蒸気機関車や旧型電機は特にその影響を受けます。

カーブが急なほどスラックは大きくする必要があります。
実物の新幹線では最大5mm、在来線では(6000/カーブ半径(m))mmで計算され、 最大30mmです


戦後大いに発展

日本の鉄道模型は、アメリカ向けの輸出でメーカーが興り、 アメリカ型を切り口にして日本市場も開拓されてきました。
(もちろん一方には メルクリンHOを筆頭として欧州勢も市場を切り開いていきました)

アメリカ向けの輸出は、駐留軍の将校に売ったことから始まったようです。
将校たちは退役してアメリカで「インポーター」を創業、 日本の真鍮製鉄道模型を輸入して自分のブランドを付けて販売しました。
(もちろん、知識や多くの製造ノウハウも彼らが持ち込んで 日本のメーカーに伝授したことでしょう)

アメリカ型客車の車輪は3フィート(914mm)です。
HOなら3.5mmスケールですから 3.5mm×3=10.5mmの車輪を使います。

日本の客車は、車輪径860mmです。
860mm÷80=10.75mm
当然、圧倒的に大量に使うHOの3フィートの車輪がそのまま使用され、 同じく輸出用のHOの線路と組み合わされ、日本型の製品が成立しました。
16番では日本型は1/80、大きなアメリカ型の1/87と近いサイズですので モーター等がそのまま使用できたことも有利でした。

このようにアメリカ型HOは日本の鉄道模型を育てた恩人です。


ところで、日本製のアメリカ型客車をひっくり返して見たことがありますか?

衝撃が走ります。

驚くほど見慣れた風景だからです。
思わず側面を見て、確かにアメリカ型だったことを確認してしまいます。
もう一度見ると、飽きるほど見慣れた16番の車輪!
これが日本型ではないことに暫くは納得がいきません。


HOと呼びたい

相対的には少数(数百人・・・)だとおもわれますが、日本にも 「ユニスケールマルチゲージ」で遊びたいモデラーが居ます。
それが実現できる可能性はHOです。
この点において、諸外国と日本に何の違いもありません。
諸外国はそのようにしてHOを発展させてきているのです。
実物のゲージが違えば、違うゲージの線路を引きたいです。
ゲージが違う車両でも、同じ縮尺で両方所有したいです。
同じ感覚で、世界中がやっている縮尺があるならば、 それに倣う、揃えるのが理想です。
特殊なものでもなんでもないひとつの志向です。

力、数による「圧殺」の対象にされています。

現在は少数派である「HOスケール派」モデラーにとって、 HOではないものをHOと呼ぶことは、 1/80をやっている人にとっての「HOと呼びたい」と言う欲求と違って、 もっと遥かに切実な「攻撃」なのです。
自己否定をされる まさに大衝撃!です。
「私はそこまで感じない」
と言う方も居るかもしれません。
もっと酷い犯罪だと考える方も居るかもしれません。
私個人の「感じ」を言わせていただきたいと思います。

私、井門義博は16番ゲージャーでもあります。
それに掛けてきた時間、労力は誰にも引けをとらないし、 おそらく日本一のコレクターだと確信もしています。
(仕事は疎かにしていたのか?と訊かれるとつらいです)
16番ゲージャーの気持ちをよくわかっています
16番でやってきた労力を現在掛け持ちでやっている12ミリの工作でもう一回やれ と言われたら絶対に拒否です。
1/87を日本に持ち込んできたことに対する怒りも猛烈でした。

そのうえで、12ミリをやっている立場で(メーカーではなく、モデラーとして) HOの呼称の問題について言わせていただくならば

1/80をHOと言われると

「お前は消えろ!」

と言われている感じがします。
これは決して大げさなことではありません。
HOをやっている立場になれば、HOの存在意義(・・・・縮尺を大切にして遊ぶ) の強烈な否定です。

1/80サイドの考え方とは比較にならない真剣な問題です。

「お前は消えろ!」

なのです。