せまいせんろ

本書は同名の写真展の図録となります。

表紙は北海の洋上を進み、孤島に至る軌道の島内の一コマ。
走る車両も珍妙ならば、干潟を行く軌道と言うのもまた他には無いシロモノです。
見開き２ページに展開する、北海の干潟に築かれた堤防上をまっすぐに進む軌道の姿は、神々しさすら感じられました。

１枚目はフランスのシモ煉瓦製造の天日乾燥場へ伸びる軌道です。
草に埋もれそうなへろへろ線路は独特のムード。
クラシカルな煉瓦工場をバックに休む列車は、その可愛らしさが工場の大きさによって引き立てられています。

２枚目のイタリアはラーザ石材工場の端正な凸型電機、本文中の説明によれば蓄電池式とのことですが、かつてはパンタグラフを載せた架空線集電方式だった由。
誌面の写真群から往時に想いを馳せるのも、また一興でしょう。
クラシカルなケーブルカーと共に、小さな列車が大理石を運び続けています。

他にも台湾は十分の炭鉱の運炭列車／中国・大連の塩田の軌道／中国・重慶の運炭用グース／ライン河改修工事用軌道などと言った、ひと癖ありそうな面々が揃っています。
観光地化される前の十分の街中軌道の画像、隔世の感があり台鉄平渓線ファンは必見です！

写真展に行かれた方もそうでない方もお手元に備えたい１冊。
産業用軽便鉄道（インダストリアル・ナロー）ファンの方に広くおすすめします。
(2021-11-10)

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